2009年01月06日

コジロー! コジロー!(2)

 妻はすぐに思いあたった。
 コジローにはガジローという兄弟がいたのだ。
 珍しい種類の犬らしいが、何度聞いても忘れてしまうので
 説明できないが、「羽をむしられた鶏肉が、からあげ粉を
 ふりかけられて、今まさに煮えたぎる油の中に入れられる」瞬間
 のような肌質で、もちろん毛はなく、冬は寒さにガタガタしている犬だ。

 なので、コジローを手に入れたときに
 親の名前といっしょに生まれた兄弟の名前、
 そして彼らがもらわれていった先を教えてもらったのだ。
 そのうちの一匹、ガジローはたまたま同じ市内に
 在住していたある家庭にもらわれたことがわかり、
 それからは、おたがいに年に数回、行き来するようになった。
 コジローとガジローは飼い主がまちがえるほど体型も表情も似ていた。
「じゃあ、これはガジローちゃん……」

「かわいそうになあ」
「きっとコジローに会いに来たのよ」
「そうだなあ」
「ああ、でもどうしよう……あの奥さんに、こんなつらいこと伝えられないわよ」
「そういうわけにはいかないだろ」

 夫婦は「おまえがいえ」「あなたがいって」と
 押し問答をくりかえしたが、結局、先方の奥さんと
 親しい妻がつらい役目を引き受けざるをえなかった。
 電話で事実を伝えると、1時間もしないうちに奥さんはやってきて
 その場で悲しみに泣き崩れた。

 ガジローは奥さんの腕に抱かれて引き取られていった。
 だが、妻はガジローが気の毒でしかたなかった。
「なにかしてあげられることはないかしら」
 そして、あることを思いつくのだが、その思いつきが
 コジローの災難をうむことになろうとは、そのとき、
 食卓のケーキを盗み食いしていた
 コジローには知るよしもなかった。

                 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00