2009年01月05日
コジロー! コジロー!(1)
ある地方都市でささやかに小売業を営む60代の夫婦の話である。
妻は午後から愛犬、コジローの姿が見えないのが気になっていた。
「どこに行っちゃったのかしら。2階にいればいいんだけど……」
コジローは来客などで店の自動ドアが開くと
外に脱走してしまい、行方をくらましてしまうのだ。
かつては何キロも離れた場所を放浪したあげく、
車にはねられてしまい、うしろ足を手術したこともある。
そんな夕方であった。
近所の次郎(仮名)さんが自動ドアのむこうから
沈痛な面持ちでやってきたのが見えた。
両腕にはぐったりとした犬が抱えられている。
妻はいやな予感がよぎった。まさか。
「コジロー!」
とびだしていくと、犬はすでに息絶えていた。
次郎さんが声を落していった。
「かわいそうに。うちの家の前ではねられたらしいんだよ」
「ああ、コジロー!……なんてことに」
妻はひとまず次郎さんに礼をいって、その犬をひきとった。
「ああ、コジロー!」
泣き崩れる妻。ただならぬ騒ぎに、
2階から足早に夫が降りてきて顔を出した。
「どうした?!」
「あなた、コジローが! コジローが!」
泣きながら妻は夫にすがりつこうとした。
が、夫はきょとんとしている。
「お前なにをいってるんだ? コジローならここにいるじゃないか」
「えっ?!」
そういわれて夫の足もとを見れば、たしかにいっしょに
降りてきたコジローがまぬけな顔で見上げている。
「えっ?!……じゃあこの子はいったいだれ?!」
~ To be continued
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明日も続きます。
投稿者 Napori Takao : 07:00