2008年01月21日
濡れ落ち葉(3)
おじさんは、かなり怒りをためているのだ。
もう少しで感情が爆発しそうなのをじっとこらえているのだ。
オバさんを怒鳴りつけたい。でも、今のオレは
彼女だけが唯一の友達であり、恋人だ……
そんな思いで、どんなに怒鳴りつけられても耐えているのか。
「働くかどうかなんて、あの子が決めることでしょ?!
あなたに関係ないでしょ?!」
「……ああ」
「よけいなこと言わないでちょうだいよ!」
「……ああ。悪かったよ」
「とにかく仕事もあるから、今はたいへんなの!
今は自分のことじゃないの! わかる?!」
息子のことで頭がいっぱいなオバさんは、
おじさんのことなんか、なんにも考えていない。
「私とつきあうなら、そういうとこ合わせてくれないと、
困るのよ! それじゃないとダメ! わかる?」
「うん」
おじさんは力なくうなずいた。
「ほんとにわかってるの?!」
「わかりました……」
これでは母親と幼児の会話じゃないか。
それでも気が済まず、「ほんとにやめてよ!」
「まったくなにを考えてるの?!」と情け容赦ない罵倒を続けるオバさん。
彼女には正面から見えるおじさんしか、見えていないのだろう。
でも、うしろからみると景色はちょっとちがう。
おじさんの背中はずっと、ふるえながら耐えている。
両膝におかれた2つの拳を握りしめたまま……
なにかのきっかけでプツンとおじさんの
忍耐の糸が切れそうな、危うい緊張がただよっている。
オバさん、そろそろやめておいたほうがいいかもしれない。
もし、今日なにもなかったとしても、こういう、
まじめで一途なおじさんが、ある日思い余って……
なんて最近よくあるニュースを想像して、背筋が凍る喫茶店の16:30。
The End
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