2007年12月25日

夕暮れの回転寿司職人(2)

カウンターに日本人女性と白人男性のカップルが座っていた。
さっきから、白人男性は日本人女性に注文を頼んでばかりいる。
なんでえ、また女に頼むのかい、てめえも男なら自分で
イキに注文してみな。「カリフォルニア巻き」くらい、自分で言えるだろ。
きびしい目を白人男性に向ける寿司職人。

 ふたたび日本人女性の方が注文した。
「ジャパニーズロールください」
 とっさに寿司職人は、睨みをきかせて言いなおした。
「ジャパニーズ巻きね?」
 思わず苦笑する日本人女性。
「あ、ハイ、ジャパニーズ巻き、です、ハイ」

 寿司職人はふたたび背中を向ける。その背中が語る。
 ちゃんとメニュー通りに注文しやがれってんだ。
 日本人女性は白人男性に小声で言って、苦笑した。
「『ロール』じゃダメなんだ……」
 白人男性も苦笑する。

 そのとき、遠くから若い女性客が大声で注文した。
「すいません、ハマチください!」
 とたんに、寿司職人の目が喜びに光った。
「ハイヨ! ハマチ! ハマチね!」
 どういうことなのだ。なにがうれしいのだ?

 彼はハマチを握り終えると、渾身の気合で差し出した。
「ハイ、ハマチどうさま!」
 渾身のオヤジギャグ! 

 このときとばかりに! が、誰も笑わない。
 客はみんな寿司に夢中だ。50代後半の寿司職人は呆然として立ちすくむ。
 いつもは絶対笑いのとれるところなのに……こんなはずはない!
「おつかれさまです。交代です」
 若手の寿司職人がカウンターのなかに入ってきて、彼の肩をたたいた。
 その言葉が引退勧告のように響いた。もうオレの時代じゃないかもしれない。
 50代後半の寿司職人は、肩を落として暖簾のむこうへ消えた。

                 The End
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (2)

コメント

ハウマッチ

東京時代は「天下寿司」って回転によく行きましたよ。
現在の生息域には回転はありません。
かなり良心的な価格で鮮度もそこそこな寿司屋はありますが。

東京ではビントロをメインに頼んだものですが
名古屋はビントロをメニューに見かけないんですよね。
トンボマグロとかいうのかな?
あの半分凍ってて口の中で溶ける脂が好きだったのに。

ちなみに回転寿司では廻っているのは見本と考えて
本当に食いたいものは中の職人さんにオーダーするべきだそうですね。

投稿者 fuk : 2007年12月25日 10:41

fukさんへ

コメントありがとうございます。
名古屋といえば新しくなった駅ビル(名前忘れました)のなかに
回転寿司がありましたね。取材の帰りにあそこで食べました。
ちょうどあのときは駅の地下街が工事をしていて、
ボクの好きな「山本屋」が一時閉店していたので、残念だったんですが、
今はもうあそこも新しくなってるのかな。

「廻っている見本」を見て注文したときに、
手抜きの店は「はい、これ! 握りたてだから! 握りたてだから!」
なんていうパターン、ありません?
うそつけ、20分くらいたってるだろ! ってつっこみたくなりますけど。

投稿者 ナポリタカオ : 2007年12月25日 11:11