2007年12月14日

環8沿いのマック(3)

お父さんがアラブ系、お母さんが日本人。
わからない言葉で話しはじめるが、大声ではない。
ときおりお父さんは「静かにしなさい」とでも言っているのか、
子どももマナーがいい。同じフロアーの離れたところにいる
日本人の母娘よりもはるかにいい。

 しかし、ストレスが限界に達しているこの女性には、
 その話し声さえも気にいらないようだ。実際にはさっきから
 自分がたてているガチャガチャ音のほうがうるさいのだが、
 他人の音が気に入らなくてしかたがないようだ。
「ああ!」
 女性は50代の親父のような低い声を出し、
 右のこめかみをかきむしり、苛立ちを表現した。

「アイス!」
「ハイハイ、ショウガナイネ(というような意味のあちらの言葉)」
 こうしてお父さんは子どもにせかされて、しかたなく
 アイスを買いに席を立った。こういうやりとりは世界共通だ。
 そんなお父さんの背中を振り返ってにらみつける女性。
 お父さんはなにも悪くない。それどころか、紳士なのだ。

数十分ほど怒りにかられて、書類をめくり、
親子連れにガンを飛ばしまくって彼女は、
ある瞬間、突然、その動きを止めた。
どうした? よく見ていると、ふと我に帰ったらしい。

私はいったいなにをやっているの?
仕事をしているつもりなのに、怒ってばかりいて書類もろくに
見ていなかった……アタシったら……
愕然として、頬づえをつき、彼女は深いためいきを吐いた。
そして、少しずつ、ふだんの顔にもどっていった。

店内に静寂が訪れた。目の前をマックの赤と黄色の看板が
くるくるとまわる。ヘッドライトをつけた車が絶え間なく、
フィギアスケートの選手のように環8を流れていく。
昔の道路はもっとゴツゴツしていて、車は縦に揺れながら走っていた。
人が運転しているあたたかみがあったような気がする。
数日、酒を抜いているN氏。
肝臓がほっと息をつく、土曜日のマックはもう20:00。

                 The End
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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