2007年11月28日

皮肉な再会

「あの……私、ホイホイサービスでごいっしょした、
 田中と申しますけど……名堀さん、覚えてらっしゃいますか?」
 田中の声だった。
「田中さん! もちろん、覚えてますよ、お元気でしたか?」
 彼は安心したらしく、私たちの距離はあの日にもどった。

 ちょっとした挨拶のあとで、田中が聞いた。
「どうですか、最近は? やってます、あそこのバイト?」
「あ、じつはもうやってないんです」
「あ、それなら」
 田中の声がはずんだ。
「まだ仕事探してるようならね、私、最近、町田のほうで
 人材派遣の仕事見つけたんです。あんな、ホイホイみたいな
 とこじゃなくてね、もっといいとこだから。
 よかったら名堀さんも誘おうかなと思って」

 私は絶句してしまった。
 なんと言っていいのかわからなかったが、素直に説明した。
「すみません、実は、仕事を再開してまして」
「あ、そうですか」
 落胆したようだった。
「でも、ありがとうございます、気にかけていただいて。
せっかくのお誘いなのに……」
「いや、でもよかった」
 その言葉とは裏腹に、田中の声のトーンは沈んでいた。

 私はフォローしようと声をかけた。
「田中さん、よかったら落ち着いたところで、
 一杯やりませんか。お近くですし」
「はあ」
 言ってから、しまったと思った。そんな余裕はないのかもしれない。
 引け目を感じさせてしまったのかもしれない。
 田中はぎこちなく、急いだ。
「じゃあ、あの、また電話しますよ。例の件もあるし」

「例の件?」
「ほら、私が健康飲料出すって話。忘れちゃいました?」
「あ! すみません、覚えてます! がんばってくださいね!」
 力んだ言いかたが自分でも不自然だった。
「はい、ありがとうございます」
「わざわざお電話いただいたのに、すみません」
「いいえ。それじゃあ、また」
 電話は切れた。それ以来、田中から
 二度と電話がかかってくることはなかった。

       日雇い最終日から1週間後の午後 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00