2007年10月22日
小さなぬくもり
6時をまわった。8時までの契約までもう少しだ。
時計を何度も盗み見る。あと1時間半、あと1時間……
時間がとても長く感じられる。
そのうち、私は自分の持ち場の荷物をすべてかたづけてしまった。
ふと、自分が積んだ荷物のいちばんうえを見ると、
積んだときには気づかなかったが、『砂丘さくらんぼ』の箱がある。
朝日が差し込む倉庫に、さくらんぼのイラストが描かれたその箱は、
ささやかなあたたかさを放っていた。思わず、その箱をやぶいて、
さくらんぼを口に入れたい衝動にかられた。
荷物がなくなるのも、だれかがこんな気分になったときかもしれない。
実際に働いた者でなければわからないだろう。
疲労がピークに達して、意識が朦朧としていたら、
まともな人間だって、なにをするかわからない。
周囲に目をやると、『将棋指し』が荷物をかなり残して、
四苦八苦していた。やはり彼は体力がないのか、仕事が遅い。
私は彼の持ち場へ向かった。
「終わったから手伝いますよ」
「すみません、僕のところまで」
『将棋指し』は恐縮したが、私としては反対側にいる坂田に
体があいたのがばれて、よけいな仕事をふられたくないだけだった。
7時30分になった。ミーティングを終えたA運送のドライバーが
続々と倉庫に現れた。彼らはここで働いている夜の日雇いたちとちがい、
朝のすがすがしい活気をみなぎらせていた。それを見たとき、
やはり私は「昼間に働く、むこうがわの人間」にもどりたい、とつくづく思った。
ともあれ、これで開放される。
あと15分。あとは適当に残った仕事を片付ければいい。
すると、私が手ぶらになったのに気づいた坂田が声をはりあげた。
「おにいさん、こっちのばらしてくれ!」
もういいだろ、なぜそんなバカ正直に仕事をするんだ、坂田。
どうせ荷物は次から次へ流れてくるんだ、
朝から勤務した人間にやらせりゃいいじゃないか。
日雇い1日目06:10-07:45 ~ To be continued
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