2007年10月20日

身のほどしらずにお説教

しかし、この状況では、とりあえず従うしかなさそうだ。
構内ではカメラが何台も作業を監視している。なにかあれば、
A運送の人間がとびだしてくるだろう。だからこそこの男はこちらが
黙って従うと確信して、大きな態度に出ているのかもしれない。

「さっさと走れ!」
 私は走ってスイッチのところへいき、太っちょに合図された
 とおりに上げ下げをした。
「さっさと上げろ!」
 強く命令するわりには、この男も合図の前にもたついたりする。
 スイッチが作動するタイミングもゆっくりだったりするので、
 この男はすぐにいらついて怒鳴った。
「下げろ! 早くやれ、バカ野郎! 次は上げろ!
 上げろ! オレは疲れてるんだ、早くやれ!」

 あのデブ。疲れているのはこっちも同じだ。
 この男に怒鳴られるたびに、憎悪が高まるばかりだった。
 こんなに心のすさんだ人間に会ったのは初めてだ。
 太っちょはさんざん勝手なことを怒鳴り、終わると私を手で追い払った。
「行け! 行っていい!」

監視カメラがまわっていなければ、とびかかっていたかもしれない。
よくもこんな男を会社は現場に置くものだ。私は今日、本気で
腹を立てずに仕事を終えられるだろうか。作業中にもう一度、
あんな態度をされたら、煮えくりかえる怒りをしずめられそうになかった。

持ち場へ戻っての作業はひとりきりだったので、いくぶん気楽だ。
坂田もタオル男もほかのベテランもレーンの反対側で作業を
続けていて、重機で死角になっている。とはいえ、ときどき台車を
片付けながら、こちらの様子をチェックしにくるので気はぬけない。
相変わらず監視カメラにも見られている。

 しばらくすると、作業中に田中が通りかかって、私に声をかけた。
「あいつ、うるさいでしょ、あの腹の出たデブ」
「ええ」
「どう見ても僕らより年下じゃない? 30前半だよね。こっちをまるで
 奴隷みたいな口ぶりでなんども呼ぶからさ、さっき言ってやったよ、
 『おまえ、なんでそんな口きくんだ。おまえが社員ならわかるけどさ、
 おなじ日雇いだろ。そんな口きかれるおぼえは俺ないよ』って。
 そうしたらあいつ、黙っちゃった」
 田中は疲労の蓄積した顔で、力なく笑った。

       日雇い1日目05:20-06:10 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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