2007年10月11日

倒れこむ男たち

休憩は30分だった。そのあいだに食事をしろ、と言うのだが、
食堂はもうしまっていて、自動販売機のパンやおにぎりしかない。
だが、さんざんフォークリフトの廃棄ガスを吸いこんだせいか、
食欲がわかない。うがいをしても、不快感が喉にはりついたままだ。
体がもたなくても困るので、私は無理矢理、弁当の残りをたいらげた。

坂田は弁当をコンビニで買ってきておいたらしい。
さっさと食うと、時計のアラームをセットし、
食堂の大きなテーブルに置いた。そしてとなりの大きなテーブルに
どさっと崩れ落ちるようにうつ伏せになったかと思うと、
すぐに熟睡して動かなくなった。
ライフルで脳髄を撃ち抜かれ、絶命した象のような肉の塊だ。

私は眠気もおきず、冷めた感情でこの男を見ていた。
坂田のTシャツも、作業ズボンも茶色に薄汚れている。
彼はなぜこんな理不尽な仕事に懸命になれるのだろう。
社員ならまだしも、日雇いなのに。
年齢制限があって、もうほかの仕事は探せないのか。
ここにしがみつくしかない、深い理由でもあるのだろうか。

古いメンバー同士さえ、「おい」と「お前」だけで呼び合う職場だが、
こんな環境が、彼がいちばん彼らしく働ける場所なのか。
それとも我慢しているのだろうか。

長く勤めている人間ほど、疲労が重く蓄積しているらしい。
休憩室では何人もの男がうつ伏せや仰向けになって、
ぐったりとなって、眠っていた。今夜入ったばかりの新入りたちは
回復するだけの体力が少しは残っているのか、
それとも緊張で眠れないのか、横にはならなかった。

寝ている人間に遠慮して、だれもなにも話さなかった。
話そうにも心を開いて話せる相手もいない。
それぞれの顔に、どうしてこんなところに来てしまったのだろう、
という深い悔恨が見て取れた。

トイレに入ると、真っ暗な空に旅客機が浮かんでいた。
着陸体制に入り、羽田空港に降りてくるのが見える。
こんな時間に、こんな場所で私は働いているのか、
と思うと胸がしめつけられた。

        日雇い1日目00:40-00:50 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (2)

コメント

肉体だけが酷使され、頭脳の働きを制限される環境では
つい色んな思惑が交錯しますよね。
私も学生時代に似たような経験をしました。

投稿者 fuk : 2007年10月11日 09:52

fukさんへ

コメントありがとうございます。
そうですか、fukさんもそんな経験がありましたか。
こんなときって、頭だけはべつのことを考えるんですよね。
仕事が単純だと頭はヒマなんでしょうか、
それとも、精神面からの防御本能なんでしょうかね~

投稿者 ナポリタカオ : 2007年10月11日 10:30

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