2007年10月08日
懇願する男
坂田は冷たい男ではない。たぶん言いたかったのは、
もっと要領よく動け、ということなのだろう。全体の仕事の流れが
あるのだから、適切な時間に休まないと迷惑なのだろう。
だが、体力がないのか、要領が悪いのか、将棋指しは
めいっぱいやっても、ほかの人間よりも仕事が遅いのだ。
『将棋指し』はまだ不服そうに私に言った。
「僕、休憩行こうとしたら、『おいちょっとこっち手伝え』って言われて
そのまま行けなかったんです。今休まないと僕ダメです。
水飲ませてください。脱水症状起こしちゃいます!」
しまいには懇願してきたが、私にはなんの権限もない。
「じゃあ、タオルの若い人に聞いてみてください。僕はね、
今日入った人間だし、あなたを休ませるとか、そういう権限はないんです。
あの白いタオルの人から、さっきの上の人に頼んでもらってください」
「はい……」
『将棋指し』はちょっと不服そうに答えてから、今度は白タオル男に訴えた。
白タオル男もちょっと気の毒だと思ったのか、私と同じように
坂田に交渉したが、周囲にも聞こえる大声が聞こえた。
「休憩はなし!」
あとはとりつく島もなかった。
だが、『将棋指し』はあきらめなかった。
タオル男がこちらにもどってくると、坂田に聞こえないように訴えた。
「僕、水飲まないとやばいんです、ほんとです。すみません、
水だけ飲ませてください。1分でもどってきますから!
1分でもどってきます!」
白タオル男はちらっと坂田を見た。『将棋指し』を
勝手に休ませたともなると、坂田に怒鳴られるのは自分だ。
背中を向けて働いている坂田を確認して、彼はすばやく言った。
「じゃ行ってきて。ほんと1分ね!」
「はい!」
『将棋指し』は走っていった。
だが、もどってきたのは10分後だった。
気弱そうな顔をして、なかなか抜け目ない男だった。
日雇い1日目22:10-22:40 ~ To be continued
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コメント
はじめまして、これからは今以上に若々しく美しく貧しくガンバリマスよろしく!!!!
投稿者 kan6 : 2007年10月08日 11:52
kan6さんへ
初コメントありがとうございます。
庭の植木の手入れで背中を痛めたというkan6さん、
もう体はだいじょうぶですか? お大事に~
投稿者 ナポリタカオ : 2007年10月09日 11:44