2007年10月05日
ため口と敬語
そこには、ミーティングでニコニコしていた、
『坂田利夫』に似た声の男が立っていた。40くらいだろうか。
彼は私の顔を見ると、すぐにかん高い声で叫んだ。
「おい、おにいさん、あんたは大田区のとこにまわってくれや!」
坂田は何人かの新入りをまかされているらしく、
私たちを『おにいさん』『おにいちゃん』『ぼくちゃん』などと呼んだ。
37の私から上の年齢の者には、『おにいさん』と呼びかけているのをみると、
一応、相手の年齢別に気をつかって話しかけているらしい。
直接、ああしてくれ、こうしてくれと指示を出すほかに、自分の子分格の
25くらいの若い男に、仕事の内容を説明するようにも言った。
若い男は頭に白いタオルを巻いて、Tシャツの下に
銀のネックレスを光らせていた。貧弱な体格と童顔を
貫禄あるものに見せようとしていたが、あまり効果はなかった。
彼は私に敬語とため口をまぜて話した。
「えーとね、これからは都内の仕分けをやるんで。
ここにあるのは 大田区なんだけど、今度はこれを台車に
書いてあるように、羽田、蒲田、田園調布、矢口、鵜の木……
ここにある地名別にばらしてください」
彼らは荷物を分けるといわず、「ばらす」と言うらしい。
「でも、気をつけて。大きな地区はこういうふうに何丁目まで
分けてあるのもあるから。ちょっと試しにやってみて」
私は荷物をいくつかに分けて、きれいにつみあげてみせた。
「おお、いいねえいいねえ」
彼は笑顔を見せた。私はタオルの若造に
ばかにされているように感じて、むかっ腹がたった。
だが、白タオル男は古株の男たちがもつ、独特の
すさんだ雰囲気をまとっていなかった。相手を拒否するような
閉じた雰囲気がない。ちょっと手があいたすきに聞いてみた。
「長くやってるんですか?」
「ううん。そんなことないですよ。長くないよ、ほんと。
ただ何度か来てちょっと慣れちゃっただけ」
こんなところを好む人間もいるのだ。
日雇い1日目21:10-22:00 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00