2007年03月27日
量販店Kの街頭ビンゴ大会(4)
商品がなんだかわからないまま、ビンゴが回り出した。
また何回か数字が叫ばれ、そのたびにため息が漏れた。
何回目かに男の声が叫ぶ。
「ビンゴ!」
振り向いてみると、男ではなく女だった。
こざっぱりした身なりの、品のいい50代女性だったが、
気合いが入りすぎて、太い男の声になっている。
同時に、けたたましく泣いていた子どもの両親も「ビンゴ!」
そしてどこからか、もう一人が「ビンゴ!」
彼らがいっせいに前へ飛び出したので、主催者は慌ててじゃんけんをさせた。
そしてそれぞれに、なにやらビニール袋に入った商品らしきものを
浮かない顔で確認しては、受け取った。
「あ~、これで終わりかあ」「なんだか、さっぱりだなぁ」という
愚痴とともに、民衆は帰ろうとした。が、そのときである。
「ここで泣きのもう1回ということで、どうでしょうかみなさん!
さあ、もう1回! もう1回!」と主催者が騒ぎ出した。
人ごみに混じっていた社員も「もう1回! もう1回!」と叫ぶ。
しかし、まさかこれからプラズマテレビが出てくるわけじゃあるまいし、
ろくなものは出てこないだろう、と客はわかっているので、
だれもかけ声に続くことなく、しらけた半笑いで彼らを見ていた。
しかし、だれも帰ろうとしない。
「ただ今、社員が商品を取りに行っています!」
もともと考えていた演出のくせに。
もどってきた社員がボックスティッシュの5箱組を高々と空中に掲げた。
「ティッシュ5箱組です!」
オレもここまで落ちたか。N氏は自分が情けなくなった。
その先のドラッグストアで、200円前後じゃないか。
ところが、これでも客は誰一人、帰ろうとしない。
こうなれば意地でもティッシュを、とだれもが血眼だ。
まあみんなが残るなら、オレも残ってもいいけど……
N氏は自分をごまかしながらとどまったが、
ビンゴが回り、数字が呼ばれると、「ビンゴ!」とあっけなくだれかの声。
「あ~あ」
ティッシュにこれだけの深いため息をつく人間はそうはいないだろう。
吹きすさぶ風。当たらない徒労感。ムダな時間。
自尊心さえ踏みにじられたような民衆たちは、
後悔に肩を落とし、暗い帰り道を帰っていく。
帰りながら、おばあちゃんがまだ文句を言っていた。
「さっきのあの女の人、ビンゴカードを2枚持ってたよ!
1人1枚だって言うから、あたしはもう1枚くれようとした人に
断ったのよ! こんなことならもらっときゃよかった!」
人の欲はなんと果てしないものだろう。
The End
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コメント
残念!
とにかくビンゴをだすことに意義がある。だから賞品なんかどうでもいいわけ・・・ということですね。でもこの心境は理解できる(笑)
投稿者 MAIA : 2007年03月27日 13:57
ビンゴの不思議な魔力ですよね~
「女性の男性化した声」のクダリに爆笑させて頂きましたヾ(o´▽`)ノ
いつでもそうですが..
ナポリさんの描く文章から風景が観えてくるので
訪れた事が無くても身近に感じちゃいます。
投稿者 ユエ : 2007年03月27日 14:07
MAIAさんへ
コメントありがとうございます。
一歩引いてみると、みっともないですよね。
この日、女子高生たちがこの道を通りかかって、
「なによ、アレ」みたいな目で見ていきました。
数日前、仕事でその世代の人たちのインタビューをしたので、
「あ、あのライターだ!」なんてことに
ならなければいいなあ~とヒヤヒヤでした。
それでもなぜか、その場に残っていたなんて……
ユエさんへ
コメントありがとうございます。
補足説明しますと、「太いダミ声」でした。
ドスコイ! みたいな感じだったので、
ごっついオヤジだな~と振り返ったら……
もう目がイッちゃってました。
商品取りに行くのも早かったなあ~
投稿者 ナポリタカオ : 2007年03月27日 14:23