2007年01月22日
寝かせてもらえない床屋(3)
この話は前作(2)から続いています。
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だんだん話に熱が入るご主人は、髪を洗う間も話しかけてくる。
「美容の世界も、ほんとのプロが少なくなって、
どうしようもないですよ。若い人はみんな美容学校を出てくるんだけど、
なんといっても、現場の経験がすべてですよ。
でもね、現場で基礎をろくに学ばないで、すぐカットしたがるからね~
それも流行の髪型だけやろうとするんだから、ダメですよ」
「おうどぷか(そうですか)……」
アタマをうつぶせで洗面台に突っ込んでいるので、もぐもぐ言い返すだけだ。
ハリウッド映画で、ロサンゼルスの暴力刑事が
街のチンピラのアタマをトイレの便器に突っ込み、
「お前の飼い主はだれだ?! 」と拷問している感じである。
ヒゲを剃っているあいだも話は止まらない。
しかも、今度は顔を近づけた状態、つまり
耳元でしゃべっているので、音量がアップして眠れないのだ。
「最近の若い人はすぐにテレビタレントの髪型の真似するけど、
タレントはふだんあんなアタマして歩いてないっつーの!
みんな、プライベートは帽子かぶって髪型隠してるでしょ?
ふだんは一般人とたいして変わらないっつーの!」
話に夢中になると「だっつーの!」を連発するクセがあるようだ。
「それにしても、ここらへんの女性は……」
と言いかけて、問題があるのか、ちょっと声をひそめる。
「50なのに、20代のようなカッコしてる人がいるでしょ?
うしろから見ると、おっ! が、前から見ると、ウエッ!
ムリするなっつーの!
それにほら、今、へんな短いパンツ、流行ってるでしょ?
膝下くらいまでのやつ。あれね、日本女性が履いたら、
ひどい短足に見えるんですよ。体の比率が違うんだから!
お前らは身長が180センチのスーパーモデルかっつーの!」
「私はね、やっぱりお客さんにくつろいでいただくために、
クリームひとつにもいろいろ気を使ってるんですよ。
カミソリだって自分で研いでるし。
まあ私の店は私がしゃべってばかりいるから、
お客さんは寝られませんけどね、ハハハ!」
腕もたつが、口もたつ。
そんな床屋に最近、はまっているN氏であった。
The End
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投稿者 Napori Takao : 11:25