2006年12月30日

師走の世田谷区民

年の瀬もいよいよ押し詰まる12月29日、午後3時。
二子玉川園、通称ニコタマの駅前は
高島屋を目指す消費者に埋め尽くされ、殺気立っていた。
さらに銀行のなかでは、多くの「持たざる者達」が
月末の家賃の入金や支払いのために、
イライラしながらATMに列をつくって並ばされていた。

N氏も数十人の行列に並ぶ。
前には3歳くらいの子どもを抱いた、30代半ばの父親。
「あ~まいったなあ、エーピー、どこかにないかなあ、エーピー」
5分おきにブツブツと妻に言う。
「あなたって、ほんとに待てない人よね」
そう言いながら、妻は列の周辺をうろうろする。

70代男性はすでに預金通帳のページを開き、
そこに財布を挟んで待っている。銀行の預金残高が丸見えだ。
そして自分の順番がきてATMの前に立ったと思うと、
いきなり大声をあげた。
「だれかー! このカード、忘れてますよ!」

せっかく自分の番が来たのに、なんてことだ、という怒り。
彼の前に使っていた女性は、その声で振り返ったのだが、
その人ではないらしい。
前の人が忘れたのを彼女は無視したのだ。
そのことに対するちょっとした怒りも70代男性にはあったようだ。

列にならんだはるか前の60前後の男性が、ATMが空いたのに気づかず、
能面のような表情でほかの方ばかり見つめている。
すぐうしろの人は「あそこ空いてますよ」
と声さえかけられず、モジモジしている。
そのうしろも、うしろも、うしろも言えずにモジモジ。
はるかうしろのおばさんがしびれをきらして、叫ぶ。
「空いてますよー!」

指摘された男は表情を変えず、ATMに向かう。

銀行の外で30代半ばの子ども連れの女性と
ガードマンの初老のおじさんが話している。
「ほんとだよね」
「そんなことしてたら、だれも働く人がいなくなっちゃう……」

株か、投資の話でもしていたのか。
昨日、箒できれいに掃かれた舗装道路に
もうたくさんの黄色の枯葉が落ちている。
この国はどこへいってしまうのだろう。

                                  The End
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投稿者 Napori Takao : 12:39