2006年08月30日

真夏の忍者(1)

知られざるN氏の特技は、庭木の手入れである。
実家に帰省するたびに3メートルのヒマラヤ杉の枝や、
4メートルにも伸びた棕櫚の葉を落とすのである。
秋になれば、桜の葉が落ちたあとで、枝をはらう。
この夏、帰省したN氏は、さっそく植木の手入れをしたのだが、
いつものように飼い猫のニャー子が野良猫に追いかけられ、
腰を抜かしてもどってきた姿を木の上から見て、笑っていた。

そんなときである。母親が声をかけてきた。
「ちょっとタカオ、屋根の上を見てよ。困ったことになったのよ」
「どうしたの?」
誘導されて屋根を眺めると、古い平屋の瓦屋根のてっぺんから、
なんと50センチもあるペンペン草が空に向かって伸びているではないか。
「なんなの、あれは?」
「瓦を突き破って伸びてきちゃったみたいなのよ。
あれ取りたいのよね~みっともないじゃないの」
「取るってどうすんの?」
屋根にのぼるのよ、あんたが
「えっー?!」

実はN氏は高所恐怖症である。
不思議なことに、3、4メートルの木なら何ともない。
むしろのぼるのは好きなくらいである。
しかし、それ以上となると途端に、足がすくんでしまう。

「だって、足場がないじゃん。どうやって屋根にのぼるの?」
「カーポートの屋根からよじ登ってくのよ。前に瓦を直してもらったときに、
職人さんがそうやって登ってったわよ」
「オレは職人じゃないよ、もう」

アクション映画のワンシーンを思い出した。
主人公と悪役が取っ組み合って、ビルの上から落ちる。
カーポートの屋根のようなところに、派手に転落し、
ズボッと人型に通り抜けて、さらに下へ転落、のパターンだ。
しかし、N氏の実家のカーポートの屋根はあんなに丈夫ではない。
グニャグニャの柔らかい素材なのだ。

「大丈夫だよ。屋根は危ないけど、支えになってる
 鉄骨のところを這っていけばいいんだから」
 母はなんともないように言うが、N氏が乗った途端、
 鉄骨はグラグラと派手に揺れた。
 よく見てみれば、鉄骨ではなく、ただのアルミである。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」
 まったく説得力のない母の声が、うしろから響く。
 これではさっき見た腰砕けのニャー子そっくりだ。
 母の横で見あげているニャー子があざ笑っているように見える。

すぐ下に隣の家の敷地。黒い車が駐車してある。
瓦屋根の斜面を転落してあの上に落ちたら、
下のコンクリートよりは怪我が少ないかもしれないけど、
斜めに落ちたり、変な角度に落ちたりしたら、
車の角とかに頭をぶつけて、もっと大怪我になるかも……
また悪いイメージが浮かんでしまう。

バリバリ、メキメキ……カーポートの屋根が悲鳴をあげる。
這いつくばって、ふたたび前進。
まだ屋根瓦の端にもたどりつけない。
真夏の太陽が、じりじりとN氏を照りつけていた。

             To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:40 | コメント (4) | トラックバック (0)

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コメント

ううっ..昇ったら最後!
任務を遂行するしか道は無い~~

そりゃもう手に汗握りますね。怖いですね恐いですね…
*ついでにTVアンテナも直してねと軽く言われないことを切に願います。

投稿者 ユエ : 2006年08月30日 11:04

ユエさんへ

コメントありがとうございます。
TVアンテナもありましたよ、そういえば。
問題の瓦よりはるか下に!

投稿者 ナポリタカオ : 2006年08月30日 13:33

私も高所恐怖症です。2回のベランダから下を見て足がすくむくらいです。
記事を更新しているのですから怪我はなかったようですね(笑)

投稿者 団塊世代が心と身体とお金の健康を考える!byヤスオ : 2006年08月30日 20:39

ヤスオさんへ

コメントありがとうございます。
フフフ、わかりませんよ。

投稿者 ナポリタカオ : 2006年08月31日 08:34

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