2006年07月31日
鉄の掟(2)
この話は前作(1)から続いています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さあ、どうぞ。召し上がってください」
各自が一斉に箸をもち、小僧寿司がむさぼりつく……
と思えば、なんと先輩の1人だけがまったく食う気を起こさず、
お茶などすすって、声優A子、B子をいやらしく見たりしている。
なにやってんだよ、もう。
N氏は箸を持てない。
掟を破れば、あとでチマチマと1時間も説教を食らうからだ。
掟『先輩が箸をつけたあとでなければ、絶対に食うな。
仲間以外の第三者が同席した場合、
先輩が箸をつけたものより、ランクの低いものを食べろ』
さすがに周囲から、「どうしたの、食べないの?」
と言われ、気をつかってガリに手を伸ばす。
お茶を飲む。またガリ。またお茶。
その間にも、着々と寿司は消える。
じっと見ているだけのN氏。これではしつけのいい犬だ。
目は充血し、冷や汗が出た。
寿司が半分なくなったところで、先輩がようやく箸を手に取った。
やった!
ところが、つまんだのは、かんぴょう巻(←テーマ音楽もあり。必聴)だ。
よりによって、それかよ。
しかし、空腹には変えられない。
N氏はすぐ箸を手に取り、素早くかんぴょう巻の下のランクを探した。
しかし、どう考えてもかっぱ巻しかないのである。
彼は続けざまに、かっぱ巻を平らげた。
そして、先輩の様子をうかがう。
1番高いの食え、早く食え!
ところが、先輩は「あ~、昨夜飲みすぎたぁ」などと言い、
早々に箸を置き、タバコを横で吸い始めた。
なにやってんだよ!
N氏の心は煮えたぎった。
残り4貫、3貫……もうだめだ。めまいがする。
最後に残ったのは、ウニの軍艦巻。
それは、大皿の海に漂う、美しいタイタニックに見えた。
周囲に緊張がみなぎる。みんな、食べにくいのだ。
もう知ったことか。あとで説教くらってもいい。オレが食ってやる!
タイタニックが沈むのは、オレの胃のなかだ。
箸を伸ばした。と、そのとき横からべつの箸が伸びた。
声優B子「あ!」
2人は見合ってしまった。
下積生活の苦労が漂うB子。彼女はどこか薄幸の雰囲気があった。
きっと、こんなときしか、ウニが食えないのだ。
とっさに、N氏は心にもないことを口にした。
「あ、どうぞどうぞ。いいですから」
「あ、いえ、そんな……」
先輩がB子に言った。
「いいですから、食べてください」
「いいんですか? フフ、すみません」
こんなとき、女性はトクだ。
ウニの軍艦巻きはあっけなくB子の胃に堕ちた。
かっぱ巻き、ガリ、お茶だけの食事。
ビタミンCはたくさん摂取できたが、
生涯でいちばん惨めな寿司であった。
N氏はその後、先輩たちに掟を守るつらさを号泣しながら訴えたが、
彼らは掟の内容を忘れていた。
じっと言いつけを守って数ヶ月が経っていた。
正直者がバカをみた。
The End
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。
投稿者 Napori Takao : 07:36 | コメント (4) | トラックバック (0)
コメント
うぅ~
俺を超えていけ!と のたまってくれる先輩がいたら…
タイタニックは胃の海にぷかぷか浮いてたのに残念ですた(;´Д`)
その後..B子さんは すくすく育ちましたか?
投稿者 ユエ : 2006年07月31日 20:14
掟をいって聞かせた人が覚えていない。
良くありますよね、バカヤローなんて叫びたい時も私にもありました。
投稿者 団塊世代が心と身体とお金の健康を考える!byヤスオ : 2006年07月31日 21:05
こんばんは。
食べ物の恨みはこわいよ!
ナント先輩は掟を忘れてしまっていたんですか。。。
かっぱ巻き、ガリ、お茶だけ・・・☆
たべざかりというのに。
投稿者 ひまわり : 2006年07月31日 21:46
ユエさん、ヤスオさん、ひまわりさん
コメントありがとうございます。
B子さんはどうなったのか、それきりでした。
名前を変えて再出発、のパターンだったかも。
掟を守るのは当時は絶対でした。
そうしないと仕事がないので、
石にかじりつくように先輩にかじりついていたものです。
自営業ってそういう時期みんなあるでしょうね。
投稿者 ナポリタカオ : 2006年08月01日 08:47
コメントを送ってください