2006年06月01日
かき揚げの悲劇
5月31日夜8時を過ぎた、あるスーパーでの出来事である。
総菜コーナーにおいて、おばちゃん(白衣の店員)が、
「いらっしゃいませー! 20%引きですよー! どうぞどうぞ!」
などと言いながら、総菜に値引きのシールを貼りはじめた。
いあわせたN氏はさらに時間が過ぎるうちに、
30、50%引きになるのを熟知していた。
そこで、わずか数十円しか値引きにならないのに、
買う気もないほかのコーナーにまわり、
熟考してなにかを買うような素振りをしながら時間をつぶし、
50%引きになるのを待ったのである。
そしてとうとうその時間はやってきた。
50%引きシールが貼られ、おばちゃんの声が高らかに響いた。
「はーい、50%引きですよ!」
N氏はすぐに駆けつけた。
そのときである。ならべていたおばちゃんが、
「ヘクシッ!」
ならべいた、かき揚げに向かって、くしゃみをしてしまったのだ。
しかも、声をかけるために、いつもしているマスクを、
たまたまはずしたそのときに……
N氏は凍りついて、立ちすくんだ。
さまざまな考えが頭の中を駆けめぐったという。
「かき揚げにはビニールで包装がしてあるんですが、
上のほうがちょっとだけすきまが空いているんですよ。
なんかそこから、おばちゃんのくしゃみが
霧状になって入ったような気がして……
明日、てんぷらそばにして食べようと思っていたんで、
いちおう火は通すつもりでしたが、
火を通すんだからいいじゃないかという気持ちと、いや、
やっぱりちょっと待てよ、という気持ちが頭の中で闘いはじめたんです」
結局、N氏は長く待ち望んだ、かき揚げをあきらめた。
そして、風邪気味のおばちゃんと、
それを買うであろう客の健康を祈った。
自らも配送センターの冷蔵庫に入ってバイトをした経験のあるN氏は、
寒いところで働くおばちゃんを責める気は毛頭ないという。
その後、こりずに、この時間帯をねらってたびたび訪れているN氏は、
すっかりおばちゃんに顔を覚えられてしまったようで、
顔を合わせるたび、おばちゃんはマスクの下から、
ニヤリと笑いかけるという。
The End
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投稿者 Napori Takao : 14:37 | コメント (0) | トラックバック (0)
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